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Vol.95 父親のこころ

2004/12/03

今月の質問者:吉川 千絵さん(企画管理部経営管理グループ)~健康診断の問診表に記入しながら最近の自分の不健康さに驚きました。生活を見直したいと思います・・。

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大学に入ってからは娘を心配する素振りなど見せなかった父ですが、私が社会人になり、親元を離れた最近は、妙に「娘が気になって仕方ない」という父親らしい一面を感じています。

実家では、帰宅が遅くなっても酔いつぶれても、注意や心配をする気配の少なかった父なのですが...。心配していながらも小言を我慢してくれていたのか、目が届かなくなって余計に心配になったのか。

最高顧問は我が子に対する気がかりが突然多くなったことはありますか?また、心配を表に出さないようにしたりもするのでしょうか?


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この世に、我が子の身の上が少しも気にならない父親はおそらくいないだろう。母親は女性特有の感情の細やかさゆえか、気になることがすぐ表情に表われ、口数が多くなりがちだろうが、それに反し父親は、男性の特質だろうか、思っていても口にすることが比較的少ないのも事実である。特に娘に対しては、女性の心理が理解し難いため、どうしても控えめになるのはやむを得ない。

あなたが親の膝下にあるときは、たとえ少しの過ちがあっても、あなたの父親は、あなたの人格を尊重し、自主性を重んじて注意しなかったに相違ない。あなたが確とした自律心の持主であることを信じているから、親は注意する必要を少しも感じていなかったのではないかと私は思う。

ところが、朝夕顔を合わせていたわが娘が、急に目の前からいなくなってしまったのだから、親として心配が昂じるのは当然のことだ。あなたがそれに気づくなら、親を安心させる手立てはいくらでもあるだろう。さりとて、子を思う親の心を量り知ることは難しく、我が子を持って始めて知ることができると言われるほど、深く大きいのだ。

すべての親は、心底から自分の身を削ってでも子の幸せを願っている。特に父親が娘にかける思いはまた別で、ましてや娘が嫁に行くようになると、婿になる相手に娘を奪われたような思いが、一時、頭を過ぎることがあるのは私だけではないだろう。

私は、子に対して十分気にかけてきたと自負している。ただ、余計な心配だけはしなかった。そのわけは、子は私たち夫婦から生まれたには違いないが、神から授かった預かりものであるから、その意志に沿って育てねばならないと考えてきたので、自然に子の人格を重んじるようになり、自主性を信じられたからである。もしも、子が私の期待に応えられないようなら、それは私の信じ方が足りなかったのだと。子を思う心は必ず通じると信じていたから、余計な気苦労をしなかっただけである。

例えば、我が家には氷枕や体温計がない。体温計で何度量っても熱は一度も下がらないから不必要だと言ってきた。子供が時々熱を出しても、一度も医者に診てもらったことがなく、水に浸したタオルで冷やすだけ。医者に診てもらった方がどれだけ安心か分からないのだが、薬や医者に依存したならば、親の安心と引き換えに、子供の免疫力を失わせ弱い体質にしてしまうと思ったからだ。子が病むときは親も共に苦痛を味わってやるのが真の愛情だと思った。子供は当時「なんとケチな、薄情な親か」と恨んだかもしれないが、大人になってそれが大きな親の愛情であったことを分かってくれたと思う。

また、子供たちを塾へ通わせなかったし、家庭教師にもつかせなかった。出費を惜しむからではない、子供の自主的な成長を願っていたからだ。次女が音大入試に際し、先生から「ピアノの実技の方が少し心配だ。お金が少し要るが、知っている音大教授のレッスンを受けるなら間違いなく受かるでしょう」と言われた。家内は「それぐらいなら、出してやったらどう」と同調したが、私は「お金を出すのが惜しいのではないよ、もし金を使って入れてもらったら、あなたは一生負い目を負うことになりますよ。そんな惨めな思いをしたくないなら、実力で挑戦してみなさい」と諭した。娘は納得して奮起したのだろうか、無事合格することができた。

ライオンは、我が子をわざと谷へ突き落とし、這い上がってきたものしか育てないという。大自然の掟に従うならば、人間の親も可愛がるだけでなく、厳しくすることも必要である。厳しさも子を思う心、愛情の表われなのだ。しかし、子に厳しくするからには、親が自らを厳しく律していなければ、子には何の役にも立たないのは言うまでもない。

あなたの期待した答えになっていないかもしれないが、了とされたい。

航海日誌