航海日誌
更新終了のお知らせ
2026/05/13

弊社 元代表取締役社長・多田野弘は2026年5月5日、105歳で安らかに永眠致しました。
当社サイトにて1997年より公開しておりましたエッセイ「航海日誌」も、更新終了とさせていただきます。
生前したためていた未公開のエッセイを以下に公開させていただきます。
長らくのご愛読、誠にありがとうございました。
「感謝にまさる能力なし」
今回のテーマの「感謝」という言葉で一番に思い浮かぶのは亡き母のことである。
私が小学校1年の時、学期末通信簿の全学科が甲だった。ニッコリしている母を見て私も嬉しくなり、家で勉強するのが楽しくなった。小学校の6年間、成績が良かったのは、そのお蔭かもしれぬ。
小学校を終える頃、父の勧めで、大阪の職工学校へ行くことを決めた。14歳から5年間下宿生活をした。私の孤独に強い性格は、この時つくられたのだと思う。「可愛い児には旅させよ」とは、このことだ。
私が大阪で暮らしていた間、毎週母から葉書が届き、細かい文字でぎっしり近況を知らせてきていた。家には5人の弟妹がおり、その世話などで大変忙しかったと思う。その中で時間を割いて便りを送ってくれたことは一番印象に残っている。人に対する思いやりの基礎を学んだと思う。
母が97歳で体調不良により、病院に入院した時、私が見舞いに行くと小さな声で「ありがとう」と言い、あとは互いの目を見つめながら過ごした。
言葉は無くともお互いの思いは充分に理解しあえた。心が通い合い濃密な時間を過ごすことができた。
母が亡くなった時、眠っているような安らかな顔を見た。院長から「立派な人であった。私がそばに行くと、ありがとうと何度も言ってくれた。」と私に話してくださった。
母の最期の姿で、人として生きる上で大切な能力を教えてもらった気がしてやまない。
『高松木鶏クラブ 多田野 弘顧問談(2026年4月)より』
「人を育てる」
致知誌今月の表題は、「人を育てる」である。これは、企業の経営に関わる大事業だと私は考えている。
なぜなら、人を育てるとは、人が生まれた時の未熟な能力を、境涯を通して進化発展させ、成長し続けさせる行為である。そのためには、受け身ではなく能動的であることだ。自発的であり、かつ積極的に進められる必要がある。
では、どうすれば自発的になれるのだろうか。人は他からの指示や縛りではなく、自由であることが第一である。人は、自由だからとずっと何もせずにいると苦痛を感じ、何かをきっかけに、自ら考え行動したい気持ちが沸いてくるはずである。それを自発的と言っているのではないか。
なぜ私がそんな考え方になったかといえば、過去に、タイムレコーダーを廃止し、社員の自由出勤を認め、信じたことで、「遅刻」「欠勤」を無くした経験からである。人は信じられれば、それに応えずにはいられないものである。そこに、自ら考え行動する自発性が生まれる端緒があるのだと思う。
我が社のタイムレコーダー廃止後の発展ぶりを知る人は多い。自発性を持った人こそ、自ら学び成長し続けていけるだろう。
しかもそれは、会社人としてだけでなく、一人の人間としての考え方、生き方となり、強いてはその者が、周囲に大きな影響を与えるようになる。またそれは、一方的に影響するのではなく、お互いに感じあえるものでなければならない。
そこに、お互いの成長が有る。
影響を感じ取れることに喜びが有る。これからも命ある限り勉強を重ねて、後継の者へ良い影響を与えていけるように、精進し続けたい。
『高松木鶏クラブ 多田野 弘顧問談(2026年5月)より』