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Lifting your dreams
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航海日誌

Vol.234 「積み重ね、積み重ねても、また積み重ね」

2021/10/04

いくら歳をとっても、やれるもんだよ。(多田野 弘)

今回のテーマは、まるで私の歩みを指しているように思えた。今日あるのはまさに、積み重ねの結果だと言える。

その卑近な例は、お手元の私のエッセーである。80歳から今日まで20年間毎月発行し、今月234号を数えた。致知誌の特集をテーマにして脳味噌を絞り、明瞭な文に考えをまとめるのはかなりの負担である。なぜそのようなことをしているのか不思議に思われるだろう。

しかし、その出来栄えはともかくも、「無」から考えをまとめ「有」を生むという創造の喜びがある。さらに、それまでの知識や経験が整理され、新しい知恵となっている。私にとっては大きな意味があり、張り合いとなっている。80歳にもなってエッセーを書き始めたのは、その頃パソコンが使えるようになったこともある。

それまでの半世紀を振り返ってみても、さまざまな積み重ねを続けてきた。その一つは心身の強化である。一番に挙げたいのは、毎年元日の朝、庵治の海岸で行う寒中水泳である。44歳から始めたが、93歳まで49年間続いた。肌を刺す冷たい海で泳げるのが喜びになっていたからだ。誰もがやれないことを容易にできるという自信と誇りが、私を衝き動かしていたといえる。自分を統御できることは誰もが渇望しているが、おいそれとはいかない。

私に自信と誇りの心境をもたらした根源は、海軍での厳しい訓練に耐え、3年間の生死を賭けた戦場の苦しみが喜びになった体験による。苦しみが喜びになる例が登山にもある。何の得にもならないのに、重いリュックを背負い、生命の危険さえある困難な山に挑み、汗水垂らしてヘトヘトになって帰ってくる。苦しいから、難しいからこそ登山は楽しいのだ。苦しみが全くない登山は喜びも半減する。ゆえに次には、より険しく困難な山を目指すようになる。

多くの先哲がこれらを裏付ける教訓を残してくれている。オーストリアの動物行動学者コンラート・ローレンツは、「若い時に逆境に遭わなかった者は不幸である」と述べている。日本にも、「艱難汝を玉にす」「若い時の苦労は買ってでもせよ」などと昔から言われてきた。動物界においても、ライオンは生まれた仔を谷底に突き落とし、這い上がってきたものしか育てないという。百獣の王たる所以である。

青年期に、苦難が自分の成長進歩の糧となるのが分かると、苦難は喜びに変わってくる。その苦難の行動は習慣となり、その習慣はさらなる苦難の行動を挑み、人生をつくり上げるといえよう。戦後も引き続き、厳しい負荷を自らに繰り返してきた。そのお陰で、今も克己の喜びに満ちた感謝の毎日を過ごせている。積み重ねによる好循環は、命尽きるまで止むことはない。

『高松木鶏クラブ 多田野 弘顧問談(2021年8月)より』

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