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Vol.41 日出ずる国の再構築

2000/05/01

今月の質問者:大東 和人さん(海外事業部)~近頃ようやく暖かい日が続き、スポーツ好きの私には大変気持ち良い季節になりました。週末ともなれば、東京ドームに通い、今年こそ悲願の優勝を成し遂げるであろうジャイアンツを応援しております。

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今年度を新体制でスタートさせた我社の一社員として、お伺いしたいことを不躾けながらご質問申し上げます。

今日本は近年まれに見る経済不況にみまわれ、未だ立ち直りの確かな足がかりのないまま日本経済及び我社も行き先の見えない暗闇の中にかすかな経済復興の光を探している状況であります。またこのような日本構造不況は、体質は違えどアジアを中心に世界各国で我国と同様の状況下にあります。そのなかで現在の世界経済をリードするのは言うまでもなく米国でありますが、その米国にも80年代には70年代には予想できなかった不況がありました。しかし冷戦体制の崩壊に伴い、日本バブル崩壊と相反するかたちで米国は見事な復活を遂げ、そのまま右肩上がりの状況を維持して現在に至っております。

そのような米国中心の世界経済しか経験したことがない環境で育ち、80年代のバブル期を経験していない70年代生まれの我々に、80年代のバブル絶頂期、日本経済界を生きた一人のリーダーとして、90年代から21世紀初頭にかけての日本経済の将来像を当時どのように分析され、方向づけされていたのかご教授下さい。また合わせまして、現状と比較して80年代の経済人の立場で、日本経済に、我社に何が不足していたとお考えでいらっしゃるのかお聞かせ下さい。

私はタダノの経営理念である「創造」は「時代の創造」であると認識しております。それを実現するために、企業としての存続を果し、日本経済の復活に貢献し、国際政治における確固とした地位を確立することが求められます。そのなかで新世紀を創造する次世代へ、国際社会で闘えるしっかりした社会教育を実践し、豊かな社会環境の構築を実現していくことがタダノの経営理念のあるべき姿であると考えます。

しかし現実は残念ながらそれらを実現するどころか、経済の根幹を成す大企業の相次ぐ倒産、失業率の悪化、就職難と社会不安を招く要素ばかり目立っております。これら全てが日本企業の構造不況と国際社会における力不足(世界の潮流を詠めなかったこと)によるものであり、これらを招いたのが80年代の日本経済にあると考えます。

このような状況下で我社の経営理念を遂行する第一歩は、新体制での経営を1日も早く軌道にのせ、企業としての存在意義を社会に証明することであります。そのために過去の経験を通し、我社の改善すべき点を我々全社員共通の判断基準とすべきであると考えます。

"日出ずる国"に生きた先輩より、"日没する国"に育ち、今一度"日出ずる国"を再構築せねばならない使命を背負った我々後輩にメッセージを宜しくお願い致します。


多田野名誉相談役:先日熊本で経営者の会合に招かれた帰途、天草でイルカウォッチングにトライした。2時間波に揺られて「イルカはイルカ」と探し廻ったがついに発見できず残念でした。

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さて、ここ十年、日本は長引く不況の中に経過してきた。新聞には毎日のように、リストラや企業倒産の記事がのるようになった。我が社もその例に漏れず、リストラせざるを得ない状況に追い込まれ、その一端として人員整理のやむなきに至ったことは誠に残念である。

我が社は創業以来、幾度か不況の中を潜り抜けてきたが、幸いにも、赤字寸前まで追い込まれながらも、辛うじて景気回復のチャンスに恵まれ赤字計上を免れた。それまで私達は赤字を出さなかったことを誇りとしながらも、一方企業にとってはそれが弱点になると私は考えていた。良く伸びる竹は、節が少ないので折れ易いように、多くの危機や逆境を自力で乗り越えてきた人や企業は、沢山の節を持っていて逆境や不況に強く、好況にも有頂天にならず、不況や危機にも怯まず恐れず、静かに笑って超えていける。私はそのような人や企業になりたいと考えていた。

ところが、当社も約十年前、バブル景気に踊らされた需要の拡大に幻惑され、実力を過信した設備と人員の増大が今日の難局を招いたことは言をまたない。当時、日本の油圧クレーンの需要は急激な伸びを示し、日本の二倍の経済規模であるアメリカを上回る需要がある事に一抹の不安があったが、当時相談役として拡大計画に対して一言の反論も為し得なかったことは私の重大な過失であることに間違いはない。

しかし、この難局が当社にとって、体質改善の場となり、ひいては大きな節となって、世界に貢献できる強い会社に脱皮する好機になって欲しい。今後も、企業間の競争は益々激化するに違いないが、競争に過当の二字はないのであって、この不況が長引く程、企業の優劣の差がハッキリとついてくるのである。したがって、この不況は企業の優劣を決めるもってこいの土俵にしなければならない。

目を世界に転じてみれば、アメリカのインフレなき好況は、実は膨大な貿易赤字と膨大な対外債務によって支えられてきた。その対外債務の大部分は、国債を大量に引き受けている日本からの借金である。だからアメリカのこの二つの病根を癒すには、日本への輸出を伸ばし、日本の内需を拡大し、日本国内の消費を本格的に拡大しなければならないのである。そうならないと一番困るのはアメリカなのである。

幸か不幸か、日本の企業のリストラはかなり進んで、人員削減と生産設備の縮小が進行していて、今年の秋頃には日本のリストラは完了し、その頃から内需拡大が始まると言われている。また、日本は不景気だと言われながら,円が少しづつ上がっている。円が強くなっているのは、アメリカから日本にお金が還流している証拠である。しかし私は、日本に好況がくるのを望みながら、一方それを拒んでいる。我が社の体質改善が終わらないうちにきて欲しくないのである。

さて、企業に節が必要であると同様に、私たち人間にも節が必要なのである。その為には、逆境こそ私たちを進歩向上させてくれる又と無い機会であって、安逸な至れり尽くせりの環境は、人間を堕落させひ弱な人間にさせるからである。だから現在の逆境を、私たちの体質改善と進歩向上の機会として利用しない手はないではないか。この逆境を、自力で克服することによって、あがなう事のできない貴重な体験と、成長進歩という成果を自分のものにできるのである。諺にも「艱難汝を玉にす」「苦は楽の種、楽は苦の種」とあるではないか。

あなたは今、若さという特権と無限の可能性を与えられているのだ。どれだけ伸びるかを期待する一人である。

航海日誌