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Vol.184 繁栄の法則

2017/07/03

いくら歳をとっても、やれるもんだよ。(多田野 弘)

繁栄とは「栄えること」であり、個人も組織も共に繁栄の法則は共通する。私は経営者として、たえず自らに問いかけてきたのが「企業の繁栄の法則」である。それに相応する答えは、これまで多くの有名な学者や経営者の言葉に示されているが、それを単に知識として理解し、実践しただけでは何の役にも立たない。繁栄の法則は、経営に対する深遠なる理念、哲学であって、経営者自らが発見し、気付いてこそ本物となる。

納得して腑に落ち、自分の価値観や人生観と一致し、信念となっているものである。故に、企業の繁栄と衰退を決定づけるのは、経営者の持つ経営の目的如何によると言いってもよい。しかしながら、私はむしろ、繁栄を企業経営の目的としてはならず、あくまでも、経営の結果であると考えている。なぜ、目的としてはいけないのかについて述べてみたい。

大小を問わずいかなる企業も、本質的に二つの側面を持っているといえよう。一つは、企業経営の経済的合理性である、赤字が続けば潰れるという、ソロバン勘定を抜きにして経営は成り立たない。つまり企業は経済的・合理的に経営しなければならない、基本的側面を持っていることである。

もう一つは、「企業は人なり」といわれているように、顧客はもとより、従業員や取引先など、多くの人を介して経営が行われており、その人たちの人間性を無視して経営は成り立たないという、企業の人間的側面を持っていることである。企業の経営には経済合理性と、非合理的ともいえる人間性尊重との、相反する二つの側面が同居しているといえる。

つまり、経済合理性を追求すればするほど、人間性を無視せねばならず、かといって、人間性を尊重すればするほど、経済合理性が無視され、ジレンマに落ち、混乱が起き、結果的に企業は衰退せざるを得ないといえる。企業は本来潰れるようにできているのである。この二つの相反する側面を調和し統合することができるのは、経営者の持つ経営理念しかないと考える。

企業を繁栄に導く経営理念はどういうものかは、企業がその社会に存在を許されているのはどうしてかを考えれば分かる。社会がその企業を必要としているからである。必要度が大きいほど無くてはならなくなり、繁栄せずにはいられない存在となる。言い換えると、企業が社会にどれだけ役立っているか、貢献しているかで、存在価値が決まるといえる。

すなわち、経営の目的が社会に貢献奉仕であるときにのみ、企業の持つ経済合理性と人間性を調和統合できて、繁栄の軌道に乗ることができる。ところが、ともすれば経営者は企業の繁栄にのみ目がいき、利益の最大追求が経営の目的だと早合点してしまいがちである。したがって、その企業に関わる人たちはすべて、企業の利益追求の手段にされることになり、いかに有能な経営者でも、その企業の繁栄は不可能となる。

企業の利益は、獲得するものではなく、社会に対する貢献度(社会が決めてくれる)に応じて与えられるものである。経営の神様と謳われた松下幸之助氏が、「利益の生まれない企業は社会の寄生虫だから、潰れて当然である」と、喝破(かっぱ)している。社会に貢献していない証拠だという。

リコーの創設者、市村清氏は、儲かる経営と、儲ける経営は「け」と「か」の違いだが、儲ける経営は利益が目的であり、儲かる経営は利益を結果と考えている。企業の経営は儲かる経営でなければならないという。これらの例に限らず、世界中の繁栄した企業はすべて、利益追求が目的ではなく、社会貢献の結果であろう。

社会貢献が目的なら、企業は慈善事業の一種なのかという疑問が起きる。しかしながら、目的は同じかもしれないが、内容が全く違っている。慈善事業は、一万円のお金はどこまでいっても一万円としか通用しないが、企業は、一万円の素材に社会的価値を加えた製品やサービスにするところに、大きな違いがあるといえる。すなわち企業は、付加価値を創造する役割を持っていることが、単なる慈善事業と異なる点である。付加価値を創れない企業は、社会での存在を許されないのである。我が社の社是に「創造」「奉仕」を謳ったゆえんである。

組織と同様に個人についても、生きる目的が社会貢献にあるなら、人間的な成長繁栄は間違いない。昔、親たちから、「世のため人のために尽くす人間になれ」と、言われたのはこのことで、繁栄の法則に相通じる。繁栄の法則が現出されるのは、企業も人間も社会に貢献して必要不可欠の存在になった結果である。

『高松木鶏クラブ 多田野 弘顧問談(2017年4月)より』

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