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Vol.96 資本主義の形

2005/01/06

今月の質問者:永井 啓介さん(タダノファウンGmbH)~11月初めにはこの冬初めての雪が積もり、朝夕の気温は氷点下。厳しい季節の到来です。

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ドイツへ赴任して1年半、日本との文化・思想のちがいに驚かされる日々です。一例として「資本主義」の形も日本と海外では異なるようです。
あるドイツ人が日米欧の資本主義に関する考え方のちがいを「個人主義のアメリカ、組織主義の日本、全体主義の欧州」と表現していました。アメリカ型資本主義は短期間の個人の利益を求める弱肉強食の経済、日本は組織(会社)の利益を重視して切磋琢磨することで競争力を養い、欧州は福祉、環境、雇用など全体のバランスを優先した社会的市場主義であると言いたいようです。

それぞれに一長一短があると思うのですが、最高顧問は今後、どの形の資本主義が主流となり得るとお考えでしょうか?


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結論からいうと、今後、あなたのいう3つの資本主義いずれも主流となることはない。

そのわけは、まず第一に、現在各国の経済制度は、いずれもその国の成り立ちや、その後の歴史の積み重ねを経て築き上げられたものであって、その国の国民の幸福と国家の繁栄にもっともふさわしい経済制度であると認められていること。さらに、その国の歴史はもとより、民族性や文化の違いが、結果としてその国の経済制度の違いとなっている。

だからあなたの言うように、同じ資本主義であっても違っていて当然で、その国にとっては最善の制度となっていること。よく西欧の資本主義といわれるが、これは長い歴史の結果として現在の形になったもので、体系だった理論や誰かの発想で作られたものではないのである。現実が先にあって、資本とか主義とかは後から名づけられたものに過ぎない。

資本主義の理論は腐るほどあるが、全部後からつけた理屈だ。したがって、現実の資本主義は、国の数ほどあるといってもいいくらいだ。しかし、マルクス・レーニンの理論から生まれた社会主義とも、コーランの教えから生まれたイスラムの戒律とも決定的に違う。資本主義には原理主義というものはありえないのだ。

したがって、資本主義は国々によって異なるのは当然であって、その国の現行の法制度を選択して経済を運営し、商売もしている。それ以外に資本主義はない。しかも、そのどれもが絶対ではない。生活の変化、好みの変化によっていくらでも変えてもいいのだ。その結果どうなるかは分からない。やってみて、そこで暮らしてみて、初めてわかるものだ。

今後予想されることは、キューバ、北朝鮮などの社会主義国を除いた世界の国々の経済制度は、その基本が変わることは無いが、今後それぞれの国の歴史の推移にしたがって、逐次修正が加えられていくことはあるかもしれない。かつて旧ソ連が採用した社会主義経済が出現できず、自由主義経済を導入せざるをえなくなった。そのために百年近い期間を要した。

同様に、中国もソ連と前後して自由主義経済を一部導入して、従来の社会主義経済制度に修正を加えたが、社会主義と自由主義との相克が起こるやもしれない状態にあるといわれている。

だからどの主義制度が完璧であるとは言えず、どの国においても、いつの時代にも、理想を掲げてよい制度を選び進むことになるだろう。

あなたの納得できるような答えになっていないことを許しを乞う。

航海日誌