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Vol.105 スポーツに観るもの

2006/07/01

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私のスポーツ観戦は、食事中のTVニュースを見るぐらいで、特定のチームや選手の勝敗に身を入れて見ることはない。

だから、今おりしも開催中のサッカー・ワールドカップで目にするような、ファンやサポーターの熱狂振りを見ると、かえって覚めた気持ちにさせられる。先日も英独のサポーターの間で衝突が起こり、多数の負傷者が出たようだが、一部の狂気のためスポーツそのものの素晴らしさが失われるのを恐れている。

スポーツはもともと好きだが、見るよりやってみることのほうが、私の気性に合っている。若い時から、すべて自己流ではあるが、水泳・テニス・マラソン・ヨットなどに挑戦してきた。年甲斐もなく、今も水泳とヨットから離れられないでいるのだ。

スポーツ観戦といえば、かつて8年間、国民体育大会の団長として出場し、選手の奮闘振りを見守る機会に恵まれた。各競技を観戦する中で、思わず身を乗り出し、手に汗を握って応援している私であった。選手が自分の力を出し切って奮闘する姿には、幾度も感動させられた。

特に勝負が決まった瞬間、私の目を引くのは、勝者よりも敗者の表情である。惜しくも勝ちを逸した選手の、悔しそうに無念の涙をこらえている姿に、私は心からの声援を送るのだった。あの選手は、負けたことがきっと奮闘の起爆剤となって、これからの飛躍的成長をもたらすに違いない。負けてよかったんだ。もし勝っておれば、慢心してしまって、捲土重来(けんどちょうらい)する気にはならないだろう。そう考える私は、判官びいきだろうか。

毎年、私は競技を前にして、県選手団に激励の言葉を述べてきた。
「競技で勝つことよりも、もっと大事なことがある。それは、相手に勝つよりも、自分に克つことである。自分の限界に挑戦しろ、相手が弱ければいつでも勝てる。自分に挑戦するための手段として、相手が与えられているのだ。悔いのないよう、これまで励んだ練習の成果を存分に出し切れ。」

その効果もあったのだろうか、香川は日本一小さな県でありながら、その後も全国20位前後をキープしているのを密かに喜んでいる。

スポーツは、人間を創るために大事な役割を果たしてくれている。肉体を鍛えるだけでなく、不撓不屈(ふとうふくつ)の根性を作ってくれる。常に自らに高いハードルを課し、それに向かって努力するという習性が、人間を創ってくれる。

何事に対しても積極的思考ができるようになり、習性という自然の振る舞いが、期せずして人格を形成してくれる。人格は幸運を呼び寄せ、幸運が素晴らしい人生を創ることになる。

スポーツを、単に勝敗にこだわるだけでなく、自らの成長進歩の手段として活用するなら、人間を創る最適な方法であると信じている。自分がスポーツをやってみて、観戦してみてそう思うのである。

航海日誌