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Vol.110 悪習慣の対処法

2007/05/08

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悪習慣がついた場合の対処法として考えられることは、悪習慣を止めるのを暫く脇において、良い習慣をどうやってつくるかを考えてみることである。なぜそれが良い対処法なのか。一旦身についた習慣は、生まれながらの天性のようになっているから、それを変えることは容易なことではない。そこで、尋常一様の取り組みでは成功は覚束ないので、逆発想してみることが却ってうまくいくのではないかと思ったからだ。良い習慣を作るのも悪い習慣をなくすのも、共に努力や忍耐が必要であるとすれば、悪習慣の方は一旦保留して、良い習慣つくりに向けて努力を集中してみてはどうだろうか。

悪習慣を止めようと決心する背景には、自分が悪習慣を持つ嫌な人間であるという否定的な気持ちが心底に潜んでいる。そのうえ悪習慣が止まない自分を終始責め苛むことになる。その苦悩に耐え切れず、遂には決心を中断せざるを得なくなる。それに反し良い習慣つくりは、これで自分は良くなるのだという視点で取り組むから、良い習慣が生まれる喜びと満足をもたらしてくれる。しかもその充実感に味を占め、次々と良い習慣を連れてくるようになる。

したがって、悪い習慣を止める努力よりも、良い習慣つくりに努力する方がどれほど効果的かは計り知れない。しかも良い習慣つくりに夢中になっているうちに、いつの間にか悪習慣が消えている不思議さに気づくはずである。即ち、良い習慣が生まれると、知らぬ間に悪い習慣を吸収し消化する働きがある。「悪い癖を矯めるより良い癖展ばせ」というのは蓋し名言なのである。その例として私の体験を述べる。

私の悪習慣の一つに喫煙があったが、社長就任を契機に禁煙しようと思った。人の上に立つ者が「わかっちゃいるけどやめられない」という無責任人間であってはならない。もし禁煙できないようなら、自分はその器ではないと密かに誓った。ところが、あっけないほどスムーズに達成できた。世間では、禁煙はよほど意志が強くなければ成功しないと言われていたのに、どうしてこれほど容易くできたのかを考えてみた。

その要因の一つは、積極思考で取り組んでいたことである。今一つは禁煙を直接の目的としなかったことである。つまり、「自分の主人は自分でしかない」という主体的人間づくりを目的とし、禁煙をそのための手段にしたことである。だから手段に縛られず、目的に直進できたことが功を奏したのかもしれない。禁煙に成功した自信は、大きな喜びと満足をもたらしてくれた上に、もっとハードルを高くしてみようという機運が生まれた。自発的に早朝起床できるのが主体的人間の証拠であると、アラームなしの早朝起床に挑戦した。以来、今日まで習慣となって根付いている。続いて早朝ジョギング、寒中水泳、ヨガ、というように、一度達成感に味を占めると次々と追加したくなり、知らぬ間にレパートリーが増えていたのだ。

他から見て何と意志の強いことかと言われるが、意志が強いのではない、楽しいから続くのである。自分に勝つことに大きな満足を覚え、気持ちがいいから止められないのである。自分が決めたことを、少ない努力で楽しみながら反復できる、それが私の第二の天性となっていると言えようか。したがって、悪習慣に対処するには、まず高い目的を決め、積極的思考で、小さくてもいいので一つでも良い習慣をつくることができると、続いて必ず良い習慣を加えたくなってくる。かくして悪習慣を止めようと思わなくても、知らぬ間に消えているのに気づくはずである。故に、良い習慣つくりを考えることが、悪い習慣を退治する一番の近道なのである。

「悪い習慣は良い習慣によって吸収される」という発想の転換は、やがてその体験の積み重ねにより、確とした人生観や価値観となり、それが日常の行動変容となって自ずと現れてくる。即ち、その毎日の行動は期せずして習慣をつくり、習慣がその人の人格を形成し、人格は運命を呼び寄せ、運命が変わることによって素晴らしい人生が創造されるのである。「良い習慣づくりの一歩」が、今迄の生活習慣を見直すきっかけとなることを願ってやまない。

航海日誌