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Vol.120 2009年を迎えるにあたって

2009/01/08

アメリカの金融危機、その後の世界同時株安を発端に、日本でも企業の業績下方修正、大幅な人員削減が発表され、景気の後退感が色濃くなっています。そのような不透明な経済状況の下、漠然とした不安感を抱き2009年を迎える方々も多いのではないでしょうか?
公私ともにさまざまな難局を乗り越えられてきた名誉顧問から、苦しい時こそ前向きに生きる秘訣を教えてください。
(質問者:航海日誌愛読者)

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清新の気あふれる新年を皆さんとともに迎えることが出来て、まことにおめでとうございます。
ふりかえってみますと昨年は、サブプライムロ-ンに端を発した世界不況の嵐は、日本にも波及してきて、大企業だけでなく中小企業にもその影響が及んでいる。政府は緊急の施策や金融措置で対策を講じているが、すぐさま挽回できるほど生易しい状態ではない。世界のトヨタでさえ赤字を出すなど、企業は軒並み減産を余儀なくされ、雇用の減少がとり沙汰されている。

これまでの2年間で3倍に増えた倒産件数は、今後さらに増える傾向にあり、上場企業にも年初から30社を越す倒産があり、しかも黒字倒産が見られることである。このような状況に対してこれまでは、不況だ不況だと言われると、すぐその後に好況が巡ってくるような錯覚をしがちになる悪い癖が私たちにあった。だから、好況が来るまでの暫くの辛抱だ位にしか考えていない。今回の不況もそれに近い受け取り方の企業が多く、自らの臨終が近いことにも気づいていないだろう。これからの時代は、世界規模の供給過剰の時代が当分続くと考えて間違いない。

これに対し以前、日本電気の小林前社長がいみじくもあるセミナーで、「不安定な企業は安定しており、安定している企業ほど不安定である」と述べられた。社員の一人一人が「ボヤボヤしていると、うちの会社は潰れるるかもしれんぞ」という会社は絶対に潰れない。その反対に、「うちの会社に限って大丈夫だ、ほうっておいてもうまくいくんだ」という安心ム-ドの行渡っている企業ほど、危ない会社である。私は30数年前の社内報に、「節の多い竹に」と題して、よく伸びる竹は節が少ないので折れやすいが、伸びが小さくても節の多い折れにくい竹にしようと書いた。危機や逆境を自力で乗り越えた企業は節の多い強さをもつことができるが、順境に安住していたた企業は、順境が災いして成長を阻んでいる。

わが社はこれまで並以上の伸びをしてきたが、まだ節の数が少なく、大きな変動には磐石の力強さに欠けている。逆境のとき、どれだけ皆が力を合わせてこれを潜り抜けてきたという事実の積み重ねが、会社発展の底力となる。いい会社を見ていると、不況の時を逆手にとって、会社成長の基礎作りのチャンスにしている。伸びる会社とそうでないのは、好況のときには分かりにくいが、不況になって初めて、本当の値打ちが現れる。

不況というのはそういう意味で、企業の存在意義を問われるときである。ゆえにどの企業もこの不況を乗り切るために努力を続けているのだが、努力むなしく消えていく企業が後を絶たない。その差は、この不況に向かってその対策に追われるか、今後の発展に向けての好機と捉えるかによってその帰趨が決まってくる。今こそ企業がなぜ存在を許されるのかという、社会的存在意義を問われるときである。

その企業が社会に必要とされる存在であるか、社会の進歩に役立つ働きをしているかによって盛衰が決められる。そのためには、社会に役立つ価値ある商品やサ-ビスを創造し、提供するのが企業の使命となる。社会に役立てるとは、貢献し奉仕を意味し、役立つものは価値の創造であり、その価値の大きさに相応しい利益が与えられるのである。このような考えで、皆が一致協力する企業が発展成長せずにはいない。わが社の社是に、創造・奉仕・協力と掲げたのはそのためである。

この理念は企業だけにとどまらず、私たちにも当てはまる人生哲学である。人間も社会的存在として、人にも世にも役立ち、「あなたがいなくては困る」と周りから嘱望されると、それに相応しい処遇が与えられる。ゆえに、人も企業と同様に、社会に貢献することが使命となる。そのための自分に資質天分の向上させ、世のため人のために尽くすことは喜びとなり、生き甲斐となる。

また、人は逆境によって創られる。人は生きている限り必ず悩んだり、躓いたりする。その悩みや苦しみを糧にして人は成長できる。良いことづくめであったなら、そのほうが不自然で、無気力な人間を作ってしまう。悩みや苦しみは、「ないほうがいい」のではなく、私たちにとって「なくてはならない」必要なものである。そう受け取れるとき、人は一段と成長することが出来る。苦は楽の種というが、苦が喜びに変わり、素晴らしい人生を創造することになる。

企業も人も、この不況をまたとない成長の好機ととらえて、「創造・奉仕・協力」にあると申し上げて、新年に向けての餞の言葉としたい。

航海日誌