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Vol.13 初泳ぎ

1998/01/01

年頭の挨拶に、「まだ泳いでいますか。」とよく聞かれるので、「はい、まだ続いています。」と答える。八十に近いという自分の年を考えると、ぼつぼつ止めてもよい潮時だと思うのだが、うまい口実が見つからずいまだに続いている。どうして、こうも意志が弱いのかと思ったりしている。

年の始めに海で泳ぐことを始めて、およそ二十五年になる。その間、天候が悪い時もあったが一回も欠けることはなかった。海は、毎朝泳いでいる庭のプールより2~3度暖かいのだが、よくも続いたものかと、我ながら呆れている。誰も誘わないのに毎年、何人かの変わり者が初泳ぎに集まってくるのも不思議な現象である。

思うに初泳ぎは、やった者にしか分からない魅力がある。誰一人泳いでいない正月の瀬戸の海を一人占めしている豪快さは、到底言葉に尽くせない。また正月の海は肌を刺すように冷たい。そのゾツとするような海にはいり、泳ぎ終えた後の満足感、達成感は何ものにも変えられない喜びである。それは、同時に自分の臆病心を克服できた勇気を誉めてやりたい気持ちと、どんな逆境にも飛び込んでいける自信が得られた喜びでもある。「今年一年はもう俺の手の内にはいったぞ。」と叫びたいような気になるのである。

前回に、安易な道よりも苦難の道こそ人間成長の原動力であり、逆境は天から与えられた機会であると述べたが、私たちはともすると先ず我が身の保全を考え、逆境からなんとしても逃がれようとするのも事実である。この私たちの成長を妨げる保守性や臆病心を打ち破る為の機会、修練の場としてもってこいの場ではないかと思う。

初泳ぎは、爽快さばかりでなく、我慢すること、耐えること、不自由が少しも苦にならないと言う多くの長所を創り出してくれている。つまり、どんな逆境も進んで受け入れる事ができるストレスの起きない強い体質を持つことができる。だから、なかなか止められないのである。

航海日誌