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Lifting your dreams
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Vol.130 若者の理系離れ

2010/11/01

今年 根岸 英一さんと、鈴木 章さんがノーベル賞の化学賞を受賞されました。2000年以降今年までにノーベル賞を受賞した日本人は10名で、いずれも化学・物理学の分野での受賞です。 ノーベル賞受賞後の会見で、北海道大学名誉教授の鈴木さんは「最近、理系に進む若い人が少なくなったのは嘆かわしい」とおっしゃっていました。日本の若者の理系離れが話題になって久しいですが、ものづくりの現場を長年ご覧になってきた名誉顧問は「若者の理系離れ」についてどのように捉えていらっしゃいますか。
(質問者:航海日誌愛読者)

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最近、理系に進む若者が少なくなってきたと言われているが、当然の結果と考えられる。それは若者が時代の趨勢(すうせい)を敏感に感じて賢明な選択をした表れだと思うからだ。戦後半世紀を過ぎた間に、日本の経済が飛躍的に成長を遂げたその大きな要因は、世界に冠たる製品を作り出したわが国のものづくりの技術であった。ところが今や日本はもとより世界は供給過剰の状態が続いていて、一部の資源物資を除いて完全な買い手市場となっている。いわゆる「ものあまり状態」が現出したのである。不況だ、デフレだと騒いでいるものづくりの業界が、その生産拠点を次々と海外に移し始めたのもそのためである。したがって、ものづくりの業界は雇用の縮小傾向が始まっており、それが若者の理系離れをもたらしたともいえる。

資源を持たない日本が、戦後の荒廃から半世紀を経ずして世界第二の経済大国にまで発展を遂げた日本人のものづくりの技術は、新しい発明・発見の積み重ね、つまり無から有を生み出す創造の働きによって作られている。もともと人間は新しいコトやモノを作り出すのを好む遺伝子を持っているようだと久米 是志氏(本田技研工業元社長)も述べているように、人間の創造する行為は心底から沸きあがる喜びを伴うものである。したがって、ものづくりの魅力は増えることがあっても減ることはないから、私は若者の理系離れは少しも気にしていない。

近頃の理系離れの傾向は人為的に動かせるものでもないし、単なる雇用の需給バランスに対応したものであって、振り子のように必ず正常な位置に戻るのではと考える。また、最近ノ-ベル賞を受賞した日本人が増えたことが若者の大きな刺激となって理系を求めるようになり、鈴木教授の心配は杞憂に終わることを願っている。しかし、理系を求める若者の数が増えることは必ずしも喜ばしいことではない。創造の喜びを知った少数の参加のほうが大事であって、少数が精鋭を作り偉大なる発明発見に繋がる素地となるからである。

創造の働きの核となるのは新しい発見に「気が付く」という心の働きであり、「ひらめき」ともいう。それは意識した思考活動よりも、無意識のときの方が多く表れる。突然表れる天啓、インスピレ-ションのようなもので、真剣な思考活動の後、ほっとして無心になり脳が空っぽになったとき、ふと浮かんでくるものらしい。万有引力を発見したニュ-トンも芝生の上に寝転んでいたとき、木からリンゴが落ちるのを見てあの大発見をした。それまで木から落ちるリンゴを世界中の人が見ているが、万有引力に気づいたのはニュ-トンだけだった。そのとき彼の脳は思考を停止し空白だったからで、脳に意識が充満していては駄目らしい。

創造の働きは理系の分野だけでなく、文系の学問、芸術、宗教など人間のあらゆる活動に創造の働きがあり、同時に喜びがある。創造の働きに喜びが伴うのは、私たちの生命は人知の及ばぬ宇宙の意志によって生を受けており、その創造の働きが宇宙の天地創造の意志に沿っているからではないだろうか。故にこのような創造活動は私たちの生き甲斐となり、心底からの喜びとなるのである。

今までに無かった新しいモノやコトを作り出して、世の中に役に立つことが創造の価値である。社是に「価値を創造することによって、社会に貢献奉仕する」ことを目的にしたのもそのためであって、自分たちの作り出したモノが世に役立っていることに誇りを覚えるのである。したがって、若者が理系文系に関係なく、創造の喜びを享受されるのを望んで止まない。

航海日誌