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Vol.31 地球環境について

1999/07/01

今月の質問者:吉岡 忠夫さん(品質保証部)~テニス歴は10数年、週末テニスを楽しんでおりますが、最近はいろいろな大会にも参加して、戦績としても自分なりに納得のいく結果が出せるようになりました。テニスを始めた頃、名誉相談役とストローク等の練習をしたことを思い出します。また機会があれば一緒に練習をしたいものです。

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地球の温暖化、オゾン層の破壊等、地球の環境問題が取りだたされて久しくなりますが、名誉相談役の考えをお聞かせ願います。

環境汚染の一つにエネルギーの大量消費が挙げられます。エネルギー消費の抑制としては、まず節電ですが、我が家で節電と言えば、電気をこまめに消すといった守りの節電しか出来ていませんが、攻めの節電としてクリーンエネルギーである太陽光発電とか風力発電はどうかと前々から考えていました。

そんな5月のある日、NHKとテレビ朝日が、"風力発電ビジネス"が脚光をあびてきているということで特集を組んでいました。日本のエネルギー事情としては、概ね火力:原子力:水力=5:3:2と言われており、まだまだ火力の比率が高く、風力、太陽光はまだゼロに近い状況です。(ヨーロッパでは風力が約5割という国もある)水力、風力、太陽光発電等クリーンエネルギーの比率をもっと高めていかなければと考えます。

大型風力発電機の発電コストは火力なみに低くなってきており、大手商社とか東北地方の自治体が大型プロジェクトを組んで推進しているようです。2000年から電力小売の自由化の実施も検討されているようです。ビッグビジネスに発展する可能性があると思います。一家に一台の発電ユニット(風力と太陽光の複合機等)、事業所単位の適正ユニットの製作・販売もおもしろいのではないでしょうか?

環境にやさしいエネルギーのひとつとして有力と考えますが、今述べた夢に対するご意見・感想をお願い致します。


多田野名誉相談役:25年前、我が家にホームステイした女子高生から、先日手紙が届いた。彼女からの連絡は、この25年間で始めてのことで驚いたが元気でやっているようで嬉しかった。

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地球の環境汚染は、人類の盛衰にかかわる大問題であると同時に、私たち一人一人の日々の生活に直接影響する身近な問題でもあります。政府も近く、自動車の燃費率に応じて税制に差をつける法案を準備中ですが、まずはエネルギー消費の抑制が第一です。

特に、石油資源が皆無の我が国では、その消費者価格も世界でも例外的に高く、石油の消費抑制に対応せざるを得ない事情があります。そのため、日本の自動車メーカーは低燃費車の開発に全力を挙げ、これに見事成功し、それは米国の消費者にも歓迎され、現在では米国市場での日系車の占有率は30%を上回っています。また、粗鋼1トンに必要な石炭の量は、日本では0.6トン、米国では1トン近く、世界一の粗鋼生産をした中国は1.5トン近く消費しています。日本の鉄鋼業がこうして世界で最も環境にやさしい実績を上げることに成功しています。これは何も自動車、鉄鋼業に限ったことでなく、日本の製造業全体が同様の対応をし、それに支えられた日本の経済活動全体が、地球環境の保全に大きく貢献しているといっても言い過ぎではありません。

これらの例から見ても、私は大局的には楽観しています。窮すれば通ずで、苦境に立たされると不思議と知恵が湧いてくるのが人間だと思います。しかし、そのためにはまず苦境に耐えることが先決です。省エネ策としてあなたの言う節電に同感ですが、発電源として、水力、風力、太陽光の他に、無公害の天然ガス、都市ガスを利用したガスタービン発電による地域に密着した分散型発電方式が今後脚光を浴びるとも言われています。また、家庭用ゴミの無公害処理とエネルギー再利用、産業廃棄物のリサイクルが環境にやさしい方式で強く求められています。

さらに、私たち一人一人が身近にできることがあります。それは思い切った生活の簡素化です。ある意味で、生活の質を下げる不自由や苦痛を忍ばねばなりません。これまで私たちは人間のエネルギーを多くの文明の利器(科学、機械、電気の利用)によって補ってきました。その原料力はすべて石油に依存しています。その結果私たちは頭や身体を動かすこと無く、多くの利便と快適さを手に入れています。一旦手中にしたこの便利さ快適さを捨てて、昔のような不便不自由な生活環境に戻る必要があります。

少し視点を変えてみますと、この利便さは、一方で必ず人間を弱体化させてしまうのではないかとも感じるのです。車の普及は人間から脚力を奪い、冷暖房は人間の抵抗力を失わせ、通信機器の普及は情報と知識の洪水によって私たちの思考力を奪っていることに気付かなければなりません。利便さを得るため、却って生命をすり減らしているとも言えるでしょう。このままでは、人間は精神も肉体も退化して、オゾン層の破壊よりもっと恐ろしい結果が文明国の目前に迫っているように思えるのです。

そこで省エネの一方策として、シンプルライフと野性を取り戻すことによって逞しい精神と肉体を作り上げ、大幅な節電省エネに資することをおすすめします。文明の利器を止めて、代わりに人間のエネルギーを利用するのです。私はヨットを趣味にしていますが、風が吹かないと少しも動きません。キャビンの中は冷暖房の設備なし、海上移動には一番時間を無駄にする乗り物であり、しかもどんなに海が荒れてこようとそれに耐え、独力で進むしかないのです。だから、私に大自然に適応し得る野性が身についたのかもしれません。所詮、省エネ体質を備えていると言えましょう。

たとえ環境汚染がひどくなっても、人間は必ずシンプルライフと野性を取り戻すことを始めるでしょう。必要な答えにならなかったことをお許しください。

航海日誌