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Vol.48 人前で話すコツ

2000/12/01

今月の質問者:谷井 悟さん(試験研究部)~20世紀最後に登場でき光栄に思っています。クリスマス間近となり、我が家では庭木を電飾し、ダンシングサンタも準備しました。ツリーは子供達に好評なのですが、サンタが踊りだすと逃げ出してしまいます。

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私はこれまで社内では講習会の講師、プライベートでは結婚式でのスピーチや母校での新入生オリエンテーションに参加したりと年齢が増すと共に人前で話す機会が多くなりました。その都度原稿らしきものは準備するのですが、限られた時間で終らせることが精一杯で聞き手のことを考える余裕がありません。いつも後になって反省する始末です。

以前、名誉相談役の講演を聞かせて頂いたことがありますが、豊富な話題であっという間に時間が経過し、その内容は今でも心に残っています。

そこで、人前で話すコツについてお聞かせ頂けたら幸いです。宜しくお願い致します。


多田野名誉相談役:子達から傘寿の祝いのプレゼントに何が欲しいか聞いてきた。さて、欲しいものは差当たり何もないが、時間が欲しいと言えば答えになるだろうか。

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人前でうまく話すコツなどがあるのなら、私が聞きたいほどである.。何故かといえば、私は元来シャイな性質なので、人前でうまく話せないことで長い間人知れず悩んでいたからである。

これまで何度も大勢の前で話す機会をもったが、一度たりとも満足な話が出来たことはなかった。しかし、長い間の体験から相手に聞き入ってもらえる話はどういうものかについて、多少なりとも分かってきたのでその一端を述べてみる。

結論から言うと、私の言う良い話し方というのは、話し方の上手下手、テクニックをいうのではない。極論すると、うまく話そうと思わないことである。話は下手でいい。立て板に水を流すように流暢な話し振りよりも、むしろ訥弁であるが心のこもった話し方に私たちは引き込まれるのである。

いかに上手に話したと満足しても、聞くか聞かないかは相手が決めることであって、相手が聞きたくないと思えば、話は頭上を通り過ぎる雑音に過ぎないことになる。つまり聞こえてはいるが、聴いていないのだ。心ここにあらざれば、見れども見えず食らえどもその味を知らずと言うように、相手が聞こうという気になるには、相手の心を開かせ、人の心に響くものがなければならない。それはテクニックでは出来よう筈がない。

相手が心を開き、耳を傾けようとするのは、話す人に誠実さと熱意がある時である。その誠実さと熱意に聞く人が感動を覚え、共感を促し、知らずして聞き耳を立てずに居られなくなるのである。うまく話そうと思えばどうしても、相手から良く思われたいという下心が頭を出し、またそれを隠そうとして無意識に構えるようになり、力んだり、あれこれと要らぬ計らいが生じてくるのである。どんなに粉飾しようとも、聞く人の心が騙せるものではない。言葉だけが考えを伝える道具ではなく、言葉にならない言葉、つまり魅力ある人間から滲み出るものがあって、話す人と聞き手の心が通い合い、思わず聞き惚れてしまうのではないだろうか。

そして、もうひとつは自分を飾らないことである。人前に進んで自分を曝け出し、恥を掻くことを恐れないことである。話し手が全てを曝け出すことによって、聞き手は心を開き、少ない言葉でも聞き漏らすまいと身を乗り出してくるに違いない。

私の一方的な考え方になっているかもしれないが、参考になれば幸いである。

航海日誌