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Vol.47 海外での失敗談

2000/11/01

今月の質問者:佐藤 直哉さん(設計第3部)~最近ようやく寒くなってきました。でも今年は暖冬らしいので初雪はいつなることやら。早く滑りに行きたいなあ!

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先日、生まれて始めてグァムへ海外旅行に行ってきました。そこで初めて外人さんとお話(といってもグァムなので日本語もかなり通じるのですが)をしたのですが、改めて自分の英語力の無さを実感しました。特に、お店でのチップの渡し方が分からなくて困りました。また、食事も日本の方がはるかに美味しいと思いました。

そこで質問です。名誉相談役が海外で困ったこととか、失敗したこと等ありましたら聞かせてください。

あと、僕は改めて「日本がいい」と思いましたが、名誉相談役はどこか海外で好きな国はありますか。


多田野名誉相談役:芝生の発育が止まり、芝刈り不要で大助かりと思ったら、落ち葉掻きが増えた。天は私の健康を慮ってくれているようだ。

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誰でも始めての海外旅行で得た印象というのは、一生忘れられない程強く記憶に残るものである。それは国内に居るだけでは得ることのできない多くの気づきがあるからである。

今回あなたが痛感された英語力の不足も、日本を離れて始めて気づいたのであって、もし行かなかったなら終生そのことに気づかなかったかもしれない。グアムの食事が日本ほどおいしくなかったというが、腹が減って食べるならばどこの国の食事でも美味しいはずである。おそらく、日本での食事でさえも美味い不味いをいっていた自分の我侭に気づかれたに違いない。

あなたのさらに大きな収穫は、日本が一番いい国だということに気づかれたことである。これも国内に居ては絶対に実感の持てない貴重な収穫である。いまや一人当たりの国民総生産は世界一の水準にあり、貧富の差の最も少ない国といわれ、犯罪の少ない治安のよい国、世界一の長寿国など世界中に誇れる素晴らしい国であることをあなたは実感として受け取れたようですね。

私も始めての海外旅行で多くの失敗をし、恥もかいてきた。その一部はVol.20「旅の思い出」で述べてあるが、一番印象に残っているのは、海外一人旅の話である。古い話で恐縮だが、1966年、単身西独のハノーバーメッセを見に出かけた時のことである。世界中の建設機械を網羅して3年ごとに開かれる最大の産業見本市というだけあって、会場に隣接した小さな滑走路に次々に舞い降りてくる自家用小型機を見て、そのスケールの大きさに驚かされた。

恥の第一は、ハノーバーのホテルが前年から全部予約済みの為、仕方なく民宿を頼んで市街地図を片手に尋ねていった。そこまではまずまず事なしであったが、翌朝、表通りからメッセ行きの市電に乗ったが通勤者で満員、ビヤ樽のような女車掌が回ってきたので切符を求めようと思って10マルクの硬貨を渡そうとしたら、とたんにすごい剣幕で怒鳴られた。衆人環視の中で私は何の事か分からず当惑していると、車掌は諦めたのか鞄の中からつり銭を探して切符を渡してくれた。車掌から怒鳴られたその訳は、すし詰め車両の中で50円の電車賃に千円を出したのと同じだったからだ。

第二は、メッセからの帰り、気づいたら今朝乗車した駅の名前を全然覚えていない。さあ困った、降りる駅がわからない、どうしようか。やっと民宿のある通りの名前を思い出し、その近くの駅で降ろしてくれるよう頼んでみたらわかってくれたのか、降りる駅で合図してくれた。しかしそこは、乗った駅とはなんだか違うような気がしたが、朝の記憶を思い浮かべながら捜し歩いた。日が暮れかけて地図を見あぐねている私を見て、通りすがりのドイツ人が親切に教えてくれた。おかげで疲れてはいたが辛うじて宿にたどり着くことが出来た。

それ以来、海外では到着空港で小銭も両替しておくこと、地図を携帯すると同時に、地名・駅名をマークすることにしている。また、あなたと同様に語学力不足を補うべく80歳にもなって恥ずかしながら英会話の勉強をしている始末である。

あなたも今回の海外旅行の素晴らしい印象の消えぬ間に、その教訓を今後の活動にぜひ反映させてもらいたい。

一般に日本人は恥の文化に育ったといわれるように、恥をかくことを恐れる傾向があるように思う。このことは一面自分を律することに役立っているのだが、恥をかきたくない心情の底には他から良く見られたい、良く思われたい、いい恰好したいという表面だけを繕うコンサバティブな気持ちが隠されているのだと思う。したがって、その行動や言動は消極的にならざるを得ない。むしろ私は積極的に恥をかくことを薦めたいのである。

進んで恥をかくことで自分の愚かさや醜さを曝け出すことによって、ひとりでに謙虚になれ、そこから多くの気づきが得られるのである。また、そこから成長進歩の原動力が生まれてくるからである。自分を知ること、謙虚になることは学問や知識はもとより、他のいかなる方法によっても得ることはできない。だから、若い間の海外旅行で進んで恥をかくことが、ひいては自らの殻を破り、一段と人間的に成長する又とない機会になるといっても言い過ぎではない。

好きな国は沢山あるが、その中でも一番がスイス。第一の理由はヨーロッパの歴史の中で、小国でありながら永世中立を守り続けた唯一の国であること、その為か古くから国民皆兵で、男子は凡て壮年期まで毎年召集され若干日の軍事教練を受けるという。だからどの家にも銃と剣が飾られている(現在は不詳)。第二は、貿易立国でスイス製の時計は有名だが、海に面していないにもかかわらず、船舶用内燃機関では世界一を誇っている。第三は、国中どこに行っても美しい景観が見られるとともに、国民の気風が質素で堅実であることなどである。

航海日誌