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Vol.64 リーダーとは

2002/04/01

今月の質問者:向井 祐子さん(品質保証部)~及川光博・私をこんな笑顔にした犯人。彼のライブを最前列真正面で堪能しちゃいました。彼の汗、流し目、手の感触・・ああうっとり。さぁ、Let's自己解放!うふ。(烏帽子はライブの小道具で、我が妹の労作。)

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昨年、阪神という人気球団の監督が交替しました。前任者は、大きな期待を背負って就任して幾年、結局状態を悪化させただけで何も良いところの見えないまま、放り出されるようにその任を去りました。それに比して、星野新監督がきてからの阪神への評価の変貌と言ったら!

キャンプ中から報道のされ方が既に変化していましたし、事実、オープン戦でもなかなかの戦いぶりを披露していました。監督人気による期待感からの誇張もあるとはいえ、この盛りあがりは何なのでしょう。  動いている選手は同じなのに、監督が替わっただけで、この変わりよう。これは一体、どんな力が働いてのことなのでしょうか。

実際にトップの重責を長年務めておられる最高顧問です。会社の中で、今回の阪神に起こったのと同じような変化を見つけられたことも、何度となくあると思います。

そんなこんなあんな体験談を、是非お聞かせください。


ホームレスが携帯で通報したので犯人がすぐ掴まったという。こんな安全でリッチな国がどこにあろうか。(多田野 弘)

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あなたの「どうしてなの?」という今回の疑問は大方の人が感じている問いかと思う。それにしても、若いあなたがこのようなポイントを突いた観察眼で、世の中の現象を捉えていることに驚いている。

私は野球にあまり関心がなくて阪神球団がどのように変わったのか詳しくは知らないが、世の中のどのような組織集団でも全く同じことが言い得て、その集団の帰結はリーダー次第で決まると私は考えている。

西洋の諺に「一頭のライオンに率いられた百頭の羊は、一頭の羊に率いられた百頭のライオンに勝る」とある。動物界に限らず、すべての人間集団はリーダーによって、強くもなり、弱くもなる。したがって企業も、リーダー次第でその盛衰が決まるといっても言い過ぎではない。なぜそうなるのかといえば、良きリーダーは自分の考え方生き方を言葉で教えるのではなく、部下が感じ取れるような具体的な自分の行動で示す人、すなわち、率先垂範によって部下をモチベート出来る人である。

良きリーダーは人を活かす人である。活かすとは他に役立つことであり、他に役立つことによって人は活かされ、なくてはならぬ存在となるのである。人間の無限の可能性を信じて、部下を自分より有能な人間に仕立て上げることに無上の喜びを覚える指導者のみが部下をモチベート出来る人であり、リーダーの行う教育も部下を活かすことにある。各人の持てる資質特性を活かすことにより、部下はやったことの中に自分が最大限に発揮され、生き甲斐を感じると共に、自己実現の喜びを覚え、そこからさらに可能性に向かってチャレンジする気持ちが湧いてくるのである。

良きリーダーは、自らの権力を背景にした命令や強制によって服従させるのではなく、リーダーに対する尊敬と信頼によって心服させることである。(阪神の星野監督もきっとこのような人に違いないと思う)その為には、リーダーはかねてから部下の尊敬と信頼を受けるよう、精神修養に務めなければならない。リーダーの日頃の一挙手一投足が、部下の尊敬と信頼に値するや否やを決定付けるといえる。だから、部下にやる気を起こさせることが出来ないのは、指導者として失格である。(野村監督それがため締め出されたのではないか)

私がリーダーシップの真髄に触れたことは幾度かあったが、一つは戦時中ペリリュウ島で米機動部隊の集中攻撃を受けた時のことである。邀撃に上がった我が戦闘機群も燃料と弾を使いきって補給の為に次々と着陸してくる。それに補給するのも我々の任務だったが、上空には寧日グラマンが数機旋回していて、それを目掛けて銃撃してくるのだった。滑走路に出れば狙い撃ちされるのは分かっているが、「滑走路は俺達の死に場所だ、行くぞ」と叫んで飛び出した。部下は全員後についてきてくれた。途中何度か空から銃撃され、その都度滑走路に伏せるしかなかったが、一人として傷つく者はなかった。私は、一言も命令しなかったが、部下は出れば撃たれるのを知りながら、誰一人怯む者はいなかった。私の率先垂範が部下をして、死地に突入せしめたとしか思えない。

昭和37年、わが社がまだ小規模だった頃、タイムレコーダーの廃止を宣言した。その頃、毎日少数の遅刻者があるのが常だった。私は、「全社員が一斉に仕事を始められないようでは、会社は発展しない。明日からタイムレコーダーを廃止し、出退社はチェックしないし、遅刻しても賃金は引かないから、決められた時間に出社して欲しい」と訴えた。もし、この制度を悪用するならば、おそらく会社は潰れるだろう。しかし、人は信じられたら、それに答えずにおれないのが人間である。信じ合える人達のいる会社こそ発展できるのではないかと考えた。結果は私の信じた通り、遅刻者皆無となったことは言うまでもない。

このことが社員に信頼を得られる端緒となり、会社発展の一助となったのかもしれない。続いて、完全週休二日制を四国ではトップに採用し、近くはフレックスタイム採用の土壌となっているのかと思う。

しかし、社員からの信頼を多少なりとも得られたかも知れないが、尊敬されるまでには程遠いことを知っている。これは一生を通じて修練せねばならぬと心に銘じているこの頃である。今回のあなたの問いは、私達指導者に対する励ましの言葉としてありがたく受け止めている。

航海日誌