クッキー(Cookie)の使用について

本サイト(www.tadano.co.jp)は、快適にご利用いただくためにクッキー(Cookie)を使用しております。
Cookieの使用に同意いただける場合は「同意する」ボタンを押してください。
なお本サイトのCookie使用については、Webサイトにおける個人情報の取り扱いについてをご覧ください。

検索

Vol.81 日本の製造業の行方

2003/10/01

今月の質問者:入船 雄一さん(生産総務課)~タバコを止めてはや1年!成長したのは「自分の体重」のみ!(困ったもんです)「食欲の秋」をむかえどこまで成長するのやら・・。

vol_81_img1.jpg

現在の製造業は、中国をはじめ海外へ生産拠点をシフトすることにより、低コスト競争に乗り遅れなうよう各社必死です。

反面、国内の空洞化招き、工場閉鎖・リストラ等の嵐が吹き荒れ非常に厳しい時代になっております。

はたして「ものづくり日本」、「Made in Japan」は再生できるのでしようか?

私見としまして、日本の製造業もまだまだ捨てたものでなく、特に品質に関しては依然「世界No1」だと思います。

この優位性を活かす事により、再び活気あるものづくり日本になれると思うのですが?最高顧問のお考えはいかがでしょうか?


photo05.jpg

結論から言うと、私もあなたと同一見解である。

まず、これまで日本の製造業が置かれた背景をみると、バブルの崩壊から始まった平成不況には、何度も危機を叫ばれたが、日本は円高に苦しみながらも貿易収支は一貫して黒字を続けてきた。円高によって日本の製造業は、対外競争力が失われていくように思えたが、リストラを含めた懸命な企業努力により、強力な競争力を保持することが出来、安定したマーケットを世界に広げる強い経営力を発揮しつづけてきた。その間デフレの原因ともいわれている、中国からの攻勢を受けたが、日本の貿易収支を狂わすほどの要素ではない。ということは、日本の製造業がしっかりと日本経済を支えてきたといっても言い過ぎではない。

10年以上になる不況の中にあっても、日本の貿易収支が黒字を続けているのは、一つには製造業の国際競争力、なかでも『非価格競争力』と呼ばれるものによる。すなわち、日本の製品が、第一に技術水準の高いこと、第二に品質性能に対する信頼性があること、第三に納期を確実に守ること、この三つの要素による価格を超えた競争力によって、円高が進む中でも、日本の製造業は世界中から高い評価を得ているのだ。

いいかえると、世界中の企業経営者は、円高によるドル建て価格が上昇しても、日本から製品を輸入する以外にないことを十分認識しているのだ。このことは、日本の製造業の企業経営力が極めて優秀であり、またそれを支えている高い技術開発努力がその背景にあることと切離すことができない。ちなみに日本の研究開発投資はGDP(gross domestic product・国内総生産)に対し3.1%あり、これは先進国の中でも最高水準であり、世界最大の経済大国アメリカでも2.6%に過ぎず、中国は僅か0.8%しかなく、世界最低水準であって、発展途上国であることを示している。

これからも続くであろうデフレ時代を生き抜くには、技術の研究開発が死命を制する重要課題となるのは間違いない。技術水準を示すものに、2000年米国の特許庁の特許公認のデータがある。その特許権数の国籍別分布を見ると、日本人によるものが25%、先進工業国ドイツは8%、英国に至っては1.5%しかない。むしろ東アジアの発展途上国台湾はドイツに次いで7%、韓国は5%を確保している。いずれも日本と競争せざるを得ない立場におかれているからだろうか、両国の研究開発指向がいかにに強烈であるかを物語っている。

以上のことから、この製造業の競争力がある限り、日本経済が崩れることはありえないと考えられる。これほどデフレが長引いていても、製造業のリストラによる余剰労働力はサービス産業に吸収されると共に、ハードからソフトへの産業構造の変化によって、街角に失業者が溢れるような深刻な事態がどこにも発生していないことから考えても言えることである。

さらに、日本の製造業の強さを支えているものに、働く人達の労働観の外国との差異を見逃すことは出来ない。日本人は、昔から稲作民族として勤労を尊ぶ精神文化を持ち、私達の血の中に今も受け継がれている。すなわち、働くことを単に収入を得るためだけでなく、自らの資質天分を活かし、社会に貢献する尊い意味を持つことを自覚して、働くことによって自己実現の喜びを覚える人達である。それに比し、西欧民族の労働観は、働くことを原罪による罪の償いであると考えている。だから働かない生活を理想としていて、そこには働くことから喜びが生まれ難いのではないか。

デフレ長期化の中、日本経済を支えてきたものは、製造業の国際競争力の強さといってよいかもしれないが、それにも限度がある。さらに競争力をつけるために、徹底した企業内の構造改革による、体質改善を図らなければならない。

航海日誌