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Vol.86 やる気を喚起する

2004/03/01

今月の質問者:中谷 義則さん(タダノ産業株式会社メンテナンス部)~自称、スキー大好き人間です。先日、久しぶりにスキーに行ってきました。スキー場のコンデションは最高、しかしながらスキーをするたびに、体力の衰えを痛感している私です。

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経営者として、長い経験をお持ちの最高顧問に質問させていただきます。

社員が少なくなった中で、全社的に作業負荷が高くなっていますが、それを補うには、社員一人ひとりの「やる気」「前向き」「積極性」ではないかと考えます。

自職場は、熟年の人が多く、前向きなやる気にさせる業務の指示、指導(体力面、言葉使い)に気を使っています。

社員一人ひとりの「やる気」「前向き」「積極性」を引き出すポイント、心構え等、今までのご経験の中で大切にしてこられた具体的な方法があればご教授下さい。


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部下を持つ人の共通の悩みは、いかにしてやる気をおこさせるかである。あなたと同様に私もそのことで悩み苦しんできたが、人の上に立つ人間として、部下を導き育てることについて悩むのは当然のことである。また、それを真剣に悩むことは、指導者にとって大きく成長させてくれる歓迎すべき事柄なのである。

あなたの質問を一言で答えるならば、それはリーダーシップ如何によるといえるのだが、それがなかなか理屈通りにいかないので誰もが悩んでいるのだ。なぜならば、仕事というのは、科学的合理的に進めなければならないが、作業する人間は単なる労働力ではない。心とか感情を持っているため、科学的合理性のみで律するわけにはいかないからである。したがって、部下にやる気を起こさせる指導者の要件は、指導者の、人間をどう見るかという"人間観"によって決まるといって言い過ぎではない。

指導者に必要とされる人間観は、第一に、人は誰でも、他からの命令や指示されるのを嫌い、自主的、自発的に行動することを好む。第二には、さらに自分のたてた目標の為には、自らを鞭打ってそれを為し遂げようとする。第三に、人は信じられたら、それに応えずには居られないのが人間である。という人間観である。

やる気を起こさせる指導者とは、部下の持つ無限の可能性を引き出して、その能力を共同の目的に結集させることである。その為には指導者は、権力を背景にした指示命令によって服従させるのでなく、指導者の日頃の具体的な行動によって、部下からの信頼と尊敬によって心服させることでなければならない。そこで初めて部下の自発性が喚起され、動機づけされるのである。多くの指導者の中には、「俺のいう通り動いてくれない、つまらない部下がいて困る」と嘆く者がいるが、それは「私は指導者として失格です」と言外に表明していることに他ならない。

部下の指導は、理屈ではなくて、指導者の毎日の行動や態度、姿勢によるのである。そのリーダーシップというのは、知識や技術ではなく、指導者が一生を通じて修練体得すべきもので、言葉や文書でその奥義を得られるものではない。その為にも、指導者は日頃から部下の尊敬と信頼を受けるよう、精神修養に努めなければならないのである。それは気の遠くなるような、長い長い自分との闘いでもある。

結論として、指導者は良き師でなければならない。良き師とは、自分の考え方生き方を、言葉で教えるのではなくて、具体的に部下が感じ取れるような自分の行動で示す人でなければならない。つまり、自分の具体的な行動で部下をモチベート出来る人である。指導者の行なう部下の教育は、部下の持てる資質特性を100%活かすことである。これが活かされて始めて、部下は生き甲斐を感じるとともに、自己実現の喜びを覚え、自分の可能性にチャレンジしようという気持ちが湧いてくるのである。

つまり、良き指導者というのは、部下の無限の可能性を信じて、部下を自分より有能な人間に仕立て上げることに、無上の喜びを覚える人でなければならない。言いかえると、部下の自発性を喚起させるのが指導者の仕事であり、部下にやる気を起こさせられないのは指導者として失格である。良き指導者とは、部下を活かす人であり、活かすとは他に役立つことである。他に役立つことによって人は活かされ、なくてはならぬ存在となるのである。

以上のような考えのもとに、私自身の精神修養に努めると共に、社員には自主性を高め、やる気を起こさせるような施策を種々試みた。ご承知の様に40年程前、当時どこの会社もやってなかった、タイムレコーダー、出勤簿の廃止を断行した。その結果、常習的だった2%の遅刻が消滅した。続いて週休二日制を四国で最初に採用し、少しも業績を落とすことなく実施することができた。これらの施策が、結果的に社員の自主性を促し、やる気を起こさせることにつながって、会社の発展に大きく寄与してくれたことは間違いない。特に我が社の献血率四割というのも、いかに社員のやる気があるかを示す貴い指標であり、私達の大きな誇りである。それらは我が社の企業文化であり、精神風土となっているのだと思う。

やってみせて、言って聞かせてさせてみて、誉めてやらねば人は動かじ。 山本 五十六

航海日誌