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Vol.88 「IT化」について

2004/05/12

今月の質問者:黒川 融さん(サービス部部品センター)~去年の11月娘を授かり、子煩悩ぶりを発揮しています・・かわいいんだな、これが。

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近年、「IT化」が目まぐるしいスピードで進んでいます。当社でもご存知の通り、パソコンによるネット化、CAD、ファイリング等各種システム導入、開発を行っています。

私の所属している部品センターも、インターネットを利用して、サービス工場より受注し、ベンダーへの発注を行っています。業務面でもIT化が進み、大変便利になりました。

先日の出来事ですが、あるサービス工場の担当者と話をしていた時に、「電話もする事が無くなって、寂しくなった」と言われ、考えてみました。

IT化以前は、電話での在庫確認・価格問合せ・注文を受けていましたが、最近では、サービス工場でインターネットを通じて部品に関する全ての情報が検索できるため、会話によるコミュニケーションがめっきり少なくなってきたのです。パソコンを利用して全世界から情報が入手でき、個人的にも、その簡便さを実感しておりますが、「IT化」には、反面、不具合もあることをあらためて認識しました。

そこで、最高顧問の「IT化」についてのご意見、あるいは、「IT化」が当たり前の時代だからこそ気をつけておられることなどをお聞かせ願えればと思います。よろしくお願いいたします。


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IT化について、私の乏しい知識で答えられることはしれたものであることを諒としてもらいたい。

私にも、あなたも感じているように、問題を含んでいるように思えてならない。IT化によって、あらゆる事象がスピード化され、省力化、効率化されているが、その利便さに酔いしれ、情報の氾濫に振り回されているように思えるのである。

それはちょうど、私たちが、いったん車を利用し始めると歩かなくなり、エアコンの快適さに慣れるとそれ無しの生活に耐えられなくなるのと同様に、IT化の魅力に幻惑されてしまって、その魔力に気づいていないようである。必要因子をインプットしたら、直ちに知りたい情報や知識がワンタッチで得られ、しかも、知りたくない知識・情報やコンピューターウィルスさえも遠慮なく進入してくる。IT化は、私たちの知性を満たしてくれるが、機械的なレスポンスでしかなく、心の通い合うコミュニケーションが形成されることがなく、生活感情を味気ないものにしていることは、間違いない。

だからといって、私はIT化を罪悪視しているのではない。むしろ、これまで以上に進展させなければならないと考えている。しかし、大事なことは、IT化がいくら進歩しようとも、あくまでもこれを私たちの知性の向上進歩と、合理化の手段とし、あたかも大工が使う鉋(かんな)のように、道具として活用すべきであるということだ。また、その道具を利用する・しないの選択肢を留保する主体性を持たなければならない。さらに、氾濫する情報や知識から、何が必要かを見い出す選択眼、価値観を持たねばならない。もし、無制限に情報に振り回されるならば、貴重な時間を空費し、かけがえのない私たちの命をムダに消費する結果になりかねないからである。

したがって、IT化が進むほど、コミュニケーションからの人間性の喪失を案じ、心の通い合う会話の必要性を感じるのである。タテマエでない理屈抜きの会話が、お互いの納得を生み、知らぬ間に信頼関係を創り出してくれるからである。これは、IT化に便乗し、合理化だけを追求している間は、良好な人間関係は生まれないことを意味している。

そこに求められるのは、美辞麗句を並べた会話や饒舌でなく、話す人の誠実さと熱意が相手の共感を促し、思わず聞き耳を立てずにいられなくなる状態が生まれることである。さらに、心の通い合う会話となるには、言葉にならない言葉、つまり、魅力ある人間からにじみ出る何か、以心伝心する何かが必要であることは言うまでもない。

蟷螂の斧(注1)かもしれないが、私のIT化に対するささやかな抵抗として、年賀状は賀詞のみパソコンで作成し、プリントするが、住所は面倒でも毛筆手書きし、裏面には一言メッセージを書き加えている。手紙はすべてペン書きとし、ITを使うことはない。私用のEメールは、簡潔を旨とするが、必ずユーモアを加味することに努めている。

(注1)蟷螂の斧(とうろうのおの)
蟷螂とはカマキリ、斧はカマキリの前あし。弱いものが身のほどを知らずに強いものに立ち向かう無謀なことのたとえ。

航海日誌