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Lifting your dreams
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Vol.93 言葉のチカラ

2004/10/04

今月の質問者:坂東 加代さん(企画管理部人材開発グループ)~夏はオリンピック、最近はイチロー選手に大声援!私も球場でのスタンディングオベーションに加わりたかったなぁ。

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プロ野球界で決行された初めてのスト、その成り行きが注目されました。 スト決定に際し、古田選手会長とある球団代表が同じ場で応じた記者会見を見て、"言葉の持つチカラ"を感じた方も多かったのではないでしょうか。

自分で一言一句を紡ぎだして伝えることと、あらかじめ用意した(された)原稿を読み上げることが、あの場では天と地ほどの差を生んだように思いました。

辞書の上では同じ言葉であっても、人を通すと威力、魔力まで持ちえるかも知れず、逆に無力にもなります。書き言葉においても、文章の漢字の多少でさえ大きく印象を変えてしまうとか・・怖さを感じます。

最高顧問が、"言葉ヂカラ"を感じられた印象深い出来事、時を経ても心に残ることはございませんか。お願いいたします。


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私たちは毎日何気なく話したり書いたりしており、あなたの言われるように、言葉は大きなチカラを秘めているが、それに気付いている人は少ない。たとえ片言隻句であっても、知恵のある人はそのエッセンスを汲み取って自分の血肉とし、運命を変える原動力にする場合もある。そんな風に考えてみると、言葉のもつ力は予想できないくらい私たちに影響を与えている。

書き言葉(文章)は何度も推敲できるが、いつまでも残るという心配があり、話し言葉はその場限りだがいったん口から出れば取り返しがつかないもので、結婚披露宴のスピーチなどでは、通り一遍の美辞麗句か、言葉足らずのつたない表現かで、私たちがいかに話し下手であるかを見せ合うことになる。

言葉は、その人の品性や人柄を表さずにはおかないもので、日本の社会では、おしゃべりを戒め、言葉に出すより沈黙を良しとする傾向が強いが、書き言葉(文章)、話し言葉いずれにおいても言えることは、その意味を理解してもらうよりも、心の奥に感じ取ってもらうほうが大事ということだ。心に語りかける言葉だけが納得をもたらし、人の心を動かす。人の胸を打たないのは、それが真理であっても、真実でないことを相手が感じ取るからである。

故大平元首相の口癖である「あ、う」という間合い(まあい)は、言いたいことを慎重に吟味して出た言葉であり、聞く人を感動させずにはおかなかった。同様に、書き言葉(文章)も、心からあふれるものがあれば言葉つきまで変わるものだ。私には経験がないが、恋をすれば表情が変わるように、言葉や語尾、句読点の打ち方までが変わってきて、魅せられるような文章が生まれるという。

さて、私にも言葉のチカラをまざまざと見せつけられた経験がある。わが社は昭和23年、資本金50万円の名ばかりの零細企業だったが、わずか半世紀余りを経て現在の規模にまで奇跡的に発展することが出来た。それは社員が伸びてくれたことと、それぞれの能力を力一杯発揮してくれたことに他ならないと信じている。私ができたのは、社員が育つような、やる気を起こすような雰囲気を作れたことぐらいかと思うが、その原動力になったのが、P.F.ドラッガーの「利益は社会貢献の結果である」という言葉であった。

恥ずかしながら、創業以来10年近く、私は経営の目的など考えたこともなく、ただガムシャラに働きつづけるのみだった。ちょうどその頃、今にして思えば玩具のような油圧クレーンを造ってみたのが予想外にヒットして、全国から注文が殺到した。急遽人員や設備を増やしたが、その割に生産は上がらず、かえって混乱するばかりだった。それがなぜかを考えて眠れぬ夜が続いたが、その原因を見出せず、自分がいかに無能であるかを思い知らされた。失意のどん底にあった時、ふと「お前は何のために経営をしているのか」に対する答えを持っていないことに気がついた。

ただ単に社員ともども生きるための生活の手段としか頭になく、確たる目的意識なしに経営している自分に愕然とした。ならば、企業経営の目的はどうあるべきかを真剣に模索し始めた。その気持ちが通じたのか、前記の名言にめぐりあえたのである。「利益は経営の目的ではない。経営の結果であり、社会貢献の尺度に過ぎない」という言葉に、目から鱗が落ちる思いがした。同時に、人間も社会的存在価値によってその処遇が決まるのだと分かった。

この考え方、理念で経営するならば、万が一会社がダメになっても、少しも悔いはないと腹を決めた。数年を経ずしてそれが杞憂であるどころか、企業発展の基本原則であることが分かり、会社の社是である『創造・奉仕・協力』の言葉も生まれた。それは、長年かかって培われて、わが社の精神文化となり、企業風土となっている。ちなみに、4割もの献血率も、クレーンとともにわが社が世界に誇れる快挙なのだ。

今でもドラッガーのこの言葉に出会わなかったら、今日の私もありえないと思っている。

航海日誌