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Vol.16 スマイルの謎

1998/04/01

当社名誉相談役のコーナー「航海日誌」。ある時は厳しく、ある時は優しいエッセイに私も励まされました。さて、今月から新企画で登場です。私たち社員が名誉相談役について日頃感じている疑問に、ずばっと答えていただくというもの。どんな質問が飛び出してくるか、乞うご期待。今月の質問は「スマイルの謎」についてです。(総務課 横山 美文)

今月の質問者:藤川 瑞穂さん(営業管理部特仕課)・・・似顔絵とキムチ鍋ならまかせて!

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私が、弘相談役と初めて挨拶を交わしたのは、入社後間もない頃の朝、JRの高架の辺りを歩いていた時でした。相談役は、上下真っ白のスポーツウエアで走ってこられ、「おはようございます。」と挨拶すると、歩を緩めてきちんと私の目を見てにっこり笑って「おはよう!」と声を返してくださいました。すごく嬉しい、清々しい気持ちになったのを今も覚えています。

皆、日常の対人場面で、疲れていたりイライラしていたり、他事に集中していたりして、つい人に対して挨拶し損なったり、仏頂面で対応してしまい、後から反省することが時々あると思います。相談役はどんな時も人ときちんと向き合って、しかも穏やかな笑顔で答えてくださいますが、その笑顔の秘訣、というか心構えがありましたら、私達にも分けていただけませんか??


弘名誉相談役・・・最近新車(スポーツタイプ)を購入しての感想は「もっと早く買うんだった。」

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以前、「あなたはいつ見ても笑顔でいられるがどうしてか」と問われてその返事に窮したことがあります。考えてみると、自分が普段どんな表情でいるかは知りようがありません。鏡で見る自分の顔は、自分を見ようとする構えた顔が映るだけで、決して他人が見ている自分の顔ではないのですから。もし、私の笑顔が作られたものでなくあるがままの表情だとすれば、私は何という幸せ者かと思わずにいられません。

表情というのは、人の心の想いの表われで、いくら隠そうとしても必ず顔に出てしまうものです。嬉しく楽しい時はひとりでに顔が綻びてきます。またつらい悲しい時は、その想いが表情に表れずにはおきません。しかし私はいつの頃からか、自分の周りに起きる出来事はすべて、どんなにつらい悲しいことであっても、自分にとって必要な出来事なんだと受け取る習慣が身についています。そのため、どんな出来事も肯定的に考えることができます。それがいつもニコニコしていられる秘訣かもしれません。(なぜそんな習慣が身に付いたのかは次回に譲る)

幼年時代には、男子は無闇に歯を見せるなと教えられ、海軍では歯を見せるのは気合が入っていないと言われ、よく殴られました。その所為か、つとめて口を真一文字に結んでいました。そして家族からも、いつも怒ったようなきつい顔をしていると言われていました。そんな私がいつも笑顔でいられるようになったことを振り返ってみると、若かった頃出会った二、三の出来事に思い当たります。

四十年ばかり前、初めての海外視察旅行の時、ロンドンで夕食をとろうと、ある高級レストランに恐る恐る入っていった時のことです。食事中、数人のウエイターの中の中国人らしき二人があまりにも無表情で無愛想なのがずっと気になっていました。帰途、階段で一人の仏頂面をした東洋人がやってくるのが見えました。よく見るとそれは壁いっぱいの鏡に映った醜い自分の姿でした。何と無愛想なムッツリした顔かと、我ながらとてもいやな思いがしたと同時に、これは気をつけねばならぬことだと肝に銘じました。

それから数日後、アムステルダムでの出来事です。何時ものように薄暗い早朝、散歩の道すがら足早に急ぐ労働者風の人達がいました。ところが、その人達の多くが、私と目線が合うとニコッとして会釈するではありませんか、知らない旅人である私に対して。

途端に私は嬉しくなって、オランダという国を好きになりました。私もあの人達のように、誰にでも笑顔で挨拶が出来たらいいなあ、日本に帰ったら早速実行に移してみようと決心したのです。先ず手始めに家族から始めてみよう、恥ずかしながら家族同士の挨拶をしていないのだから。

帰国した翌日の朝、勇を鼓して妻に「おはよう」と言ってみました。妻はあっけにとられていましたが、慌てて答えてくれました。続いて子供たちにも私から挨拶をしました。このようにして家族同士の挨拶が自然に行われるようになったのです。

それ以来、どこの誰かは知らなくても、早朝ジョギングで出会うジョガーや新聞、牛乳配達人にも、ひとりでに挨拶できるようになりました。知らない人に進んで笑顔で挨拶できることは、とても嬉しく素晴らしいことだと思っています。

航海日誌