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Vol.20 旅の思い出

1998/08/01

パンパカパーン。「航海日誌」はおかげさまで20回目を迎えることができました。ありがとうございました。これからも細く長く続けていく予定ですので、ご愛読くだされば幸いです。さて、今月の質問は「旅の思い出」です。

今月の質問者:沖永 文子さん(志度工場)~1ケ月くらい前から毎晩赤川次郎のミステリー小説を読んでいます。もう10年くらい前になるかな・・大好きで買い求めた赤川作品、その数18冊。捨ててしまおうと一度は決意して、押し入れから出したはずなのに、再びはまってしまいました。今となっては処分する気もすっかりなくなってしまった今日この頃です。

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夏と言えば海、海と言えばヨット、ヨットと言えば名誉相談役が、連想されるほど名誉相談役は、海が似合っていらっしゃいますね。私も、島で育ったこともあってか海が大好きで、子供のころは漁船ですが、小さな船に乗せてもらったものです。

でも、今回は名誉相談役に、海の旅ではなく、陸のほうの旅について聞かせていただけたらと思うのですが、旅行はお好きですか?

印象に残っている観光地や、おいしかった名物、旅先での忘れられない事件や心温まる親切など、何でも結構です。


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古い話で恐縮ですが、37年前、約2ヶ月かけて初めて世界一周の視察旅行に出かけました。その時強烈な印象を受け、今でもその情景をハッキリ思い出すことができるのは、アムステルダムを訪問した時の出来事です。

丁度それは日曜日、バスで市内観光にでかけたその途中、とある美しい公園に入っていきました。見るとまず目に飛び込んだのは、若いカップルがやたらに多いことでした。しかもその殆どがベンチで、芝生の上で抱き合ってキッスしているではありませんか。私たちはびっくりして、生唾を飲み込んで凝視するだけ。車内は総立ちとなり、あ、あそこにも、こちらにもと大騒ぎとなったのです。

いままで、外国映画で時々キッスシーンを見てきましたが(当時テレビはなかった)、公衆の面前でしかも、生で見られるとは予想もしてなくて実に驚くほかはありませんでした。よく見ると、どのカップルも少しも恥じること無く、実に堂々としていて、他から見られるのを少しも気にしていない風です。また脇を通る人も、その至福のカップルに一瞥も与えないで通り過ぎてゆきます。騒いでいる私たちこそ恥ずかしい。

公園を出る頃、一同われにかえってみると、大騒ぎしているのは日本人の一行だけであることに気が付きました。そして、異口同音に「うらやましいなあ、あんな風に自然に愛情表現が出来たらどんなにいいだろう」という羨望の声が車内に湧き起こりました。日本人は(私もそうですが)どうして愛情の表現が下手なんだろう、なぜ人前でキッスができないのだろうか、もっと素直に表現できないものだろうかとしきりに考えてみたのです。

振り返ってみると、私たちの羨望する心は実に醜いものではないでしょうか。自分達もあのように天真爛漫に愛情表現をしたいのだが、それが出来ないためにおこる嫉妬心でしょうか。とにかくこれは、西欧のデモクラシーに由来する、「自分の欲することを、人にして上げなさい」という黄金律から生まれた社会習慣ではないでしょうか、だとすれば、私たちが彼らのように振る舞えるには、日本人に真のデモクラシーが浸透する日を待つしかないと思いました。

あれから37年、すでに大都会では時折、目の前でキッスシーンを散見するとも聞きますが、まだ自然に行われているとは言い難いでしょう。近い将来、おおらかに、自然に愛情表現ができて、周囲の人もそれを微笑ましく見守ってやれるような日がくることを望んで止みません。

航海日誌