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Vol.99 ものづくりへの思い

2005/05/10

今月の質問者:堀江 伸維さん (タダノ・エンタープライズ株式会社佐倉工場)~ 気がつけば長女の成人式。「ほんとに二十歳かよ。この前までおしめを・・」と勝手に回想したところで誰も聞いていない。「娘よ!もっと【ゆっくり】大人になれよ・・!」

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佐倉でトラック相手にTM・SS・SLの「架装業務」に携わって16年。長い間、トラックの変遷を、現場でつぶさに見続けてきました。
度重なる規制と車自体の機能up。それに加え、上物(架装物)の機能もupしてきたことにより、架装の組み合わせは随分とややこしくなり、ニアミスの危険性は16年前の比ではなくなりました。

「架装業務」は車の品質に深く関わり合う現場でもあります。「車両メーカ目線」は「クレーンメーカ目線」よりも「社会目線」に近く、社会的責任をズッシリ重く感じる昨今ですが、この架装の現場には良い意味での「緊張感」があるようにも思え、私はそれを大切にしたいと考えています。そう考えると、得たものは少なくありません。

しかし、企業に新たな技術へ「挑戦」する気概が萎え、確たる根拠もない「萎縮」が蔓延することは、企業にとって将来へ失うものは大きいのではないかという懸念も感じます。今、「ものづくり」を生業としている生産現場の仲間達は、精神的な拠り所と、奮い立たせる"何か"を探しているようにも見えます。

ぜひ、最高顧問ご自身の「ものづくりへの思い」をお聞かせください。


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佐倉で奮闘されている皆さんのご苦労に対し、かげながら感謝している。

当社のものづくりの原点は、当社の社是に掲げてあるように、社会に貢献することに尽きる。社会的価値を創造することによって、社会に貢献・奉仕することである。社会的価値とは付加価値ともいい、安全性、確実性、経済性、利便性などを備えた製品の値打ちをいう。あなたがいう「社会目線」がそれに相当する。

つまり付加価値なき製品は、いかに精巧に出来ていても、廃品にも劣ることになる。故に、社会からあの製品がなくては困るのだといわれるような物を作ることが、社会貢献を果たすことになる。また、その貢献度に比例して利益が与えられるのである。(航海日誌VOL.34「奉仕の精神」参照)

私のものづくりの始まりは、戦後間もない昭和22年1月、父と弟と私の三人で最初に創り上げた「製瓦機」だった。焦土の復興の中、貴重品でほとんどが手作りであった瓦から、「足りなくて困っているものを作って喜ばれたい」という、現代流にいえば「顧客の創造」の発想であった。

既設の製品をスケッチさせてもらい設計図を作った。またコストを抑えるため、鋼板溶接構造で作ることを考えた。しかし、当時は自前の工場も無く設備機械は何も無く、あるのは自分たちの頭脳とわずかな技術だけであった。親戚筋の鉄工所の片隅を借り、工作機械を空いている時に使わせてもらい、旋盤加工部品はすべてを外注し、1ヶ月半かけて完成させた。この1号機は、スケッチをさせてくれた製瓦業者が早速購入してくれたばかりか、他の同業者にも斡旋してくれ、何台か注文をいただいた。

親子三人が力を合わせて作り上げた製品が市場に受け入れられ、立派に役立っていることの喜びや満足感は、それまでに要した苦悩をはるかに超える、ものづくりの醍醐味だった。引き続いて量産に適したスレート瓦を作る水圧プレスや油圧を利用して菜種油を搾るプレスを作ることを考えたり、三輪ショベルカーや国鉄の枕木位置整正機などを作って、社会の要請に応えてきたことが、当社の発展を支えた油圧式クレーンが生まれる土台となったことは間違いない。

さて、生産現場で働く人たちが精神的な拠り所を求めているようだが、部下がやる気を起こすか失うかは、リーダーのあり方によることが多い。(航海日誌VOL.64「リーダーとは」参照)

リーダーの主たる仕事は、メンバーをモチベートさせることであるが、いかなる高度の知識、管理技術を駆使しても、人間をそれで動機付けすることは不可能である。人間は科学的、合理的な存在でないからだ。人の心を動かすものは何か、何が人の心を行動に駆り立てるのかは、リーダーの資質と指導のあり方によると考え、私はこれまで、自分はリーダーとしてどうあらねばならないか、人の上に立つ人の条件は何かを問い続けてきた。

第一に、まことにありふれたことだが、リーダーは心身ともに健康であること。強いリーダーシップを発揮するには、肉体的にも精神的にも常に生き生き溌剌として、精神は充実し、しかも安定していなければならないからだ。そのために私は早朝ジョギング、冷水浴を40余年続けてきた。

第二に哲学を持つこと。人生観、価値観、人間観なるものをしっかり身につけることである。人間は何のために生きるのか。働くということはどういう意味を持っているのか。また、なぜ働くことが喜びとなり苦しみとなるのか。生き甲斐はどうして生まれるのか。本当の幸せとは一体どんなことなのか。人を信じるということはどういうことか。これら日常生活に無関係なテーマについて第一級の見識を持ち、情熱を込めて語ることができなければ、人の上に立つことは出来ない。そう考え、私は今も時間を惜しんで真理を求め続けている。

要するに、リーダーシップとは、自分の考え方ややり方を部下が感じ取れるように、自分の具体的な行動で示すことである。リーダーの率先垂範が第一なのだ。また、リーダーの行なう部下の教育は、部下を活かすことである。各人の持つ資質特質が活かされて、初めて部下に生き甲斐が生まれ、そして部下の成長が、最終的には企業の発展の原動力となるのである。

航海日誌