S.T.

購買部門の仕事は主に「購買先選定」「価格決定」「納期管理」の３つの業務で成り立っています。私が担当する油圧ホースの場合、購買先様は数社。クレーンの動きは油圧で制御されていて、その中で油圧ホースは人体で言う血管のような役割を担っています。「ブームのこの部位にはA社のこの部品」「このホースを作れるのはB社だけ」といった各社の特徴を学ぶ過程でも、理系脳が大いに刺激されます。こうした製品知識をベースに、設計図面を読み込んで材質や生産段階での加工も含めた要求仕様を把握し、適材適所の購買先選定につなげます。
価格決定は会社の利益にも直結するので、特に緊張感をもって臨みます。価格交渉ではタダノと購買先様双方の主張があり、どちらにも譲れないコアな部分があります。最近も原材料価格の高騰などを背景に、購買先様からコストアップの要請を受けましたが、市場価格の動向や過去の取引履歴等の詳細な分析データ等をもとに交渉を重ね、お互いに納得できるwin-winの着地点を見出すことができました。購買先各社とは長年のお付き合い。交渉中はシビアな場面も当然ありますが、変な駆け引きを用いるような空気感はなく、常に共存共栄を目指す信頼関係の厚みを感じます。生産ラインに影響が及ばないよう、納品状況を日々フォローする納期管理においても、購買先様との密なやり取りが欠かせません。

開発や生産技術から得る社内的な技術知識と、購買先様から仕入れる最新の市場動向と製品情報。２つの観点から発想する購買担当は、より広い視野でタダノ製品のブラッシュアップに貢献できるポジションです。先日も、購買先様から「この部品は海外製で調達性に課題がある」と指摘を受け、安定供給可能な代替品を開発部門に提案し、社内協議を経て採用されました。この時、購買に求められる役割を果たせた手ごたえとともに、この仕事の可能性の大きさを実感できました。
タダノの名に恥じないクレーンを市場に送り出すには、性能や安全性の向上を目指す開発、品質に目を光らせる品質関連部署、そして部品の安定供給を担う購買の各部門が協力し、常に補い合う努力が必要です。私が扱う部品数は購買先様1社あたり1000品目前後。クレーン生産の重要な一翼を担う自覚を持ち、小ロットの調達案件にも全力で臨んでいます。

将来的には、「すべてに精通したオールラウンダーなバイヤー」になることが目標です。とはいえ今は、まだまだ勉強中の油圧ホースの購買スキルを高めることが先決です。今後は購買先様との情報交換をより密にし、この部品は1日何個までは対応可能というように、各社の生産能力の実情を正確に把握したいと思っています。そのために、まずはコロナの影響で止まっていた購買先視察を実施したいですね。無理のない生産計画の立案を後押しする意味でも、早急に実行するつもりです。そのうえで、開発と協働して工程改革を進言するなど、部品の品質向上に向けた前向きなアクションを仕掛けたいと考えています。
いずれはエンジンや電子制御部品も担当し、経験領域を広げたいですね。今後とも社内外の多様なセクションと広く深く関わる購買の特性を生かし、仕事の幅をさらに広げていければ、と思っています。